声明アメリカ政府はキューバへの経済封鎖を止め主権を尊重せよ

「アメリカの対キューバ経済封鎖解除とキューバの主権を考える有志の会」の世話人による緊急声明

アメリカの対キューバ経済封鎖解除とキューバの主権を考える有志の会
https://unblockedcuba-japan-action.jimdofree.com/

緊 急 声 明

アメリカ政府は、キューバへの経済封鎖を止め、主権を尊重して、11月15日の違法デモへの支持を直ちに止めるよう、再度要求します。

7月11日、長期にわたる新型コロナによる鬱屈、モノ不足にたいする不満、二重通貨の廃止の過程における高インフレ、頻発する停電に国民が苦しんでいる中、アメリカ政府に誘導されて全国数十か所で同時多発的に起こされた外国製デモが、最終的には短期間に収束したあと、キューバ国民の生活は平穏を取り戻していました。

ところが、10月12日、ハバナ市、ビジャクララ県、ラストゥナス県、オルギン県、シエンフエゴス県、グアンタナモ県、ピナルデルリオ県、カマグエイ県、アルテミサ県の地方政府に、アルチピエラゴ・グループという反政府活動グループにより、11月15日各県都で「平和デモ」と称してデモを実施する旨、申請が行われました。

アルチピエラゴ・グループは、アメリカ政府の機関であるUSAID(米国国際開発庁)、NED(全米民主主義基金)から資金援助を受けるだけでなく、社会的騒乱を引き起こす訓練も受けています。資金の流れは、証拠や証言で明らかとなっており、アメリカ政府の中枢部の関与は、否定できません。

キューバ政府当局は、旧ハバナ市街行政評議会議長が、10月12日、デモの申請は、憲法第56、45および4条に照らして、違法であり認められないと却下しました。この決定に対し、アルチピエラゴ・グループは、独自の憲法論を持ち出し、大統領及び国会議長あてにデモの許可を再要請し、全面的に対決する姿勢を示しました。

アメリカの議会も政府も、「平和的」と称するが実際は過激な暴力デモで政府と対決をめざす、「体制転換の代理人」であるアルチピエラゴ・グループへの明確な支持を表明し、キューバの体制転換を進めようとしていることは、明白です。このようなことは、近年見られなかったことです。

キューバ政府への不満や抗議はありうることです。しかし、それは、あくまでキューバの法律に従って、キューバ人同士で話し合って解決すべき問題です。そうした自主的な解決を、アメリカ政府の干渉は不可能にするものです。その意味で、私たちは、アメリカ政府にキューバへの経済制裁を止め、キューバの主権を尊重するよう、再度、強く求めるものです。

2021年11月12日
アメリカの対キューバ経済封鎖解除とキューバの主権を考える有志の会
世話人一同

大西広(経済学、慶應義塾大学教授・京都大学名誉教授)
勝俣誠(国際政治経済学、明治学院大学名誉教授)
新藤通弘(ラテンアメリカ研究者)
田中靖宏(ジャーナリスト、日本アジア・アフリカ・ラテンアメリカ連帯委員会、国際部長)
田端広英(フリージャーナリスト)
所康弘(国際政治経済学、明治大学教授)
西谷修(思想史、立教大学名誉教授)
山崎圭一(ラテンアメリカ研究、横浜国立大学大学院教授)
吉原功(社会学・明治学院大学名誉教授)

<経緯の解説>

7月11日、長期にわたる新型コロナによる鬱屈、モノ不足にたいする不満、二重通貨の廃止の過程における高インフレ、頻発する停電に国民が苦しんでいる中、アメリカ政府に誘導されて全国数十か所で同時多発的に起こされた外国製デモが、最終的には短期間に収束したあと、キューバ国民の生活は平穏を取り戻していました。

ところが、10月12日、ハバナ市、ビジャクララ県、ラストゥナス県、オルギン県、シエンフエゴス県、グアンタナモ県、ピナルデルリオ県、カマグエイ県、アルテミサ県の地方政府に、アルチピエラゴ・グループという反政府活動グループにより、11月15日各県都で「平和デモ」と称してデモを実施する旨、申請が行われました。

アルチピエラゴ・グループは、7月の失敗を経験に8月半ばに結成された反政府活動グループで、明らかにされた資料や証言によれば、アメリカ政府の機関であるUSAID(米国国際開発庁)、NED(全米民主主義基金)やCIAから訓練を、USAIDやNEDから資金援助を受け、アメリカにあるキューバ民主化移行評議会(CTD)やティモシ・スニィーガ・ブラウン、在キューバ・アメリカ大使館臨時代理大使、国務省キューバ担当高官、アレクサンダー・アグスティン・マルセイルなどの指導を受けているグループです。経歴と主張から、軍事介入を含めた体制転換をもくろむグループです。同グループのウエブサイトCubalexによれば、会員は3万人余で、半数はキューバの国外に住んでいます。このグループの行動を、アメリカ議会の反キューバ議員、マルコ・ルビオ、マリオ・ディアス=バラルト、マリア・エレーナ・サラサール、全米キューバ系アメリカ人財団(CANF)、2506旅団(キューバ侵攻傭兵集団)などが賛意を表明しています。

キューバ政府当局は、旧ハバナ市街行政評議会議長が、10月12日、デモの申請は、憲法第56、45および4条に照らして、違法であり認められないと却下しました。この決定に対し、アルチピエラゴ・グループは、独自の憲法論を持ち出し、大統領及び国会議長あてにデモの許可を再要請し、全面的に対決する姿勢を示しました。

すると、同日アメリカ国務省のプライス報道官は、「われわれはキューバの人権擁護者を支持し、逮捕者の釈放の要求を支持する。デモは表現の自由であり、平和的に集会する自由である」と、反政府デモへの支持を述べました。これに対し、キューバのブルーノ・ロドリゲス外相は、「キューバ国民は、平和、キューバの平穏、安定と調和を享受する権利を尊重するよう要請しているのである。ユーゴ、ウクライナ、ベネズエラ、ボリビア、リビア、シリア、ニカラグアで試みられたこれら反政府デモは、クーデターを引き起こし、軍事干渉を招こうと企画されたものである」と反論しました。すると16日アメリカ国務省は、「アメリカ政府は、キューバ国民が、平和に集会し、自らの意見を表明し、自らの政権と将来を自由に選択する権利を強く支持する」という異例の声明を発表しました。

10月21日、キューバの各県の検察局は、アルチピエラゴ・グループの各デモ申請者に「旧ハバナ市街行政評議会議長の決定を再確認したうえで、憲法第156条の検察庁の権限、憲法の順守を監視する権限に基づき、法律違反のデモの呼びかけをこれ以上行わないように」警告しました。しかし、それに対し、グループのリーダーのジュニア・ガルシアは、「11月15日のデモは必ず行う」と断言しました。

すると、22日、アメリカのフアン・ゴンサーレス西半球担当国務副次官補が、「もし、キューバ国民の基本的人権が侵されるか、15日の市民デモの推進者が起訴されるなら、アメリカはおそらく制裁をもってそれに答えるだろう。われわれは、キューバ国民が自らの道を希望する声を支持し、支援し、強化する」と脅迫的な干渉発言を行いました。これに対し、24日に開催されたキューバ共産党第2回中央委員会総会で、ディアス=カネル共産党第一書記は、問題の本質を次のように分析しました。
「キューバは、非正規戦争、ソフト・クーデターの対象となっている。アメリカ政府の声明の目的は、キューバ革命を打倒することである。われわれの深刻な物質的困難により国民が軟化し、ひざまずくことを敵は期待している。11月15日のデモは、わが国の政治体制の変更を推進する目的をもっており、アメリカによる攻撃、中傷、ウソ、脅迫という方策に呼応し、政治体制に反対し、混乱を起こし、資本主義を復活しようとするものである」と、厳しく反論しました。

引き続き、26日キューバ政府は、アルチピエラゴ・グループの指導者、ジュニア・ガルシア、マヌエル・クエスタ・モルアがUSAIDやNEDが開催した「移行期における軍隊の役割について」のセミナーに参加していたこと、両機関がキューバ政府の転覆のために、以下のように資金を供与してきたことを明らかにしました。

ポランコなどの報告によれば、次の資金が供与されました。

  • NEDは、2017年にアルゼンチンの右翼組織CADAL(ラテンアメリカ開放・開発センター)107,000ドル、2021年に100,000ドル。
  • USAIDは、昨年9月だけでも、キューバの攪乱計画のために、2023年までの計画に承認された1,800万ドルのうちから6,669,000ドル
  • トランプ政権時代、7,000万ドル以上が、キューバに対する破壊活動に
  • ラジオ・マルティおよびテレビ・マルティに1億ドル以上
  • USAIDは、キューバ民主主義幹部団(DDC)のオルランド・グティエレス・ボロナット617,500ドル
  • 反キューバメディア・キャンペーンのためのメディアADNデジタルに2,031,260ドルを、またCubanetに783,000ドル

こうした資金の流れからもアメリカ政府の中心部の関与は、否定できないのです。

11月に入り、メディアの分野でも、ワシントン・ポスト、CNN、ヌエボ・ヘラルドなどが、一斉に「平和的」デモへの支持を表明しています。またSNSによる政府批判、デモ支持の呼びかけが急増しています。

一方、バイデン政府は、6日、キューバへの家族送金は、キューバ軍の利益になる恐れがあるとして、送金の緩和を拒否しました。バイデン政権は、キューバを失敗国家とみなしており、年間30~40億ドル(外貨収入の30%程度)を制限し、外貨不足に悩むキューバ経済を一層締め上げる機会と考えています。11月15日は、キューバが自国産のワクチン接種が進み感染の拡大を制圧したことから、国際空路をほぼ全面的に開放し、コロナ禍で激減した外国人観光客の入国を大幅に認め、年間30億ドル程度の観光収入を回復し、経済回復の軌道に踏み出そうとする日です。しかし、アメリカ政府は、外貨収入の2本柱を妨害し、経済を一層悪化させ、国民の不満を高め、社会的爆発を引き起こさせる意図なのです。

11月5日になるとアメリカ議会は、上下両院で「基本的自由求める平和的デモを支持し、キューバ政府の弾圧を批判しキューバ市民の拘留者の即時釈放を要求する」決議を採択しました。また、同決議は、バイデン大統領には、「11月15日の平和的デモへの支持とキューバが自由な国となるよう希望すると再度表明すること、キューバ革命軍、キューバ内務省、キューバ革命警察に平和的デモ隊を逮捕しないように呼びかけること、国際社会にキューバの人権侵害を非難するアメリカ政府の立場に参加するよう呼びかけること」。

これに対し、翌日、キューバ国会は、アメリカ議会の決議は干渉主義で、キューバの主権を侵害するものとして厳しく反論しました。

7日なると、ジェイク・サリバン、バイデン政権安全保障担当補佐官が、CNNとのインタビューで、「状況が変わったので、キューバ政策も変わった。7月に重要な抗議があったが、政府は過酷にそれを弾圧し、それは今日まで続いている。体制転換のマニュアルから学び、アメリカ政府は、キューバと対決することにした」と述べ、選挙中に述べていた、オバマの道でもトランプの道でもない第三の道を否定し、新たなキューバ政府との対決を確認しました。

以上を見ると、アメリカの議会も政府も、「平和的」と称するが実際は過激な暴力デモで政府と対決をめざす、「体制転換の代理人」であるアルチピエラゴ・グループへの明確な支持を表明し、キューバの体制転換を進めようとしていることは、明白です。このようなことは、近年見られなかったことです。

アルチピエラゴ・グループは、11月15日のデモは「平和的」に行い、政治囚の釈放、基本的人権の承認のみならず、体制の転換を求めて全国各地で状況に合わせて強行すると表明しています。一方、キューバ政府は、外国に支援されたいかなるデモも認められないと、繰り返し警告しています。キューバ政府のこれまでの自主的な外交、社会政策、平穏な社会生活を支持する圧倒的多数の市民も、11月15日自分たちの態度を表明すると述べています。

 キューバ政府への不満や抗議はありうることです。しかし、それは、あくまでキューバの法律に従って、キューバ人同士で話し合って解決すべき問題です。そうした自主的な解決を、アメリカ政府の干渉は不可能にするものです。その意味で、私たちは、アメリカ政府にキューバへの経済制裁を止め、キューバの主権を尊重するよう、再度、強く求めるものです。
以上

Theme by Danetsoft and Danang Probo Sayekti inspired by Maksimer