月1原発映画祭ニュースレター第7号

■ 今月のトピック「映画で見るチェルノブイリ」

4月26日でチェルノブイリ原発事故から35年となります。そこで今月は、スタッフが選んだチェルノブイリ関連の映画を、それぞれのスタッフのコメントと共に紹介します。

●『子どもたちの夏 チェルノブイリと福島』2011年12月公開 監督:田野隆太郎


福島の原発事故から半年後にチェルノブイリと福島の様子を現地取材したドキュメンタリーです。
チェルノブイリでは当局からの圧力で事故後の避難が遅れ、多くの子どもが甲状腺ガンを発症しました。甲状腺ガンの手術を受けた女性へのインタビューでは、今は2人の子どもの母親になっており、2人がとても健康であることに感謝し、将来を前向きに捉えた発言をしていたのが印象的でした。しかし時々見せる表情からは、この発言が空元気であり、実は不安を感じ続けているようにも映ります。
原発事故から2ヶ月後に避難先から福島のいわきに戻ってきた、はるなちゃんのお母さんは次のように語ります。「何も対策が取られていなくて、教育の現場というのは、子どもの命を守ってくれる場所だと思っていた。そういう対策がされていないことにすごく驚きました。」
はるなちゃんは、子どもを守るネットワークと地域の人たちによって除染された公園で、事故後始めて公園で遊びます。無邪気に遊ぶはるなちゃんの姿から、本来ならごく当たり前の日常が、大人の身勝手さで当たり前ではなくなった様子を感じました。
チェルノブイリと福島に共通しているのは、どちらも被害を少なく見せようとしたり、何もしようとしない当局の圧力や姿勢です。子どもがその一番の犠牲となっている状況が伝わってきます。

・Amazon prime (会員は無料)
https://www.amazon.co.jp/dp/B08CSVZPZ2?tag=norikae0d-22&linkCode=osi&th=...

・U-NEXT (会員は無料)
https://www.video.unext.jp/title/SID0049559?cid=D33658&rid=SID0049559&ad...

●『Dear Fukushima, チェルノブイリからの手紙』

監督・脚本・撮影・制作:大竹研吾/2012年/75分/ロシア、ウクライナ

チェルノブイリに今後の福島への答えを探そうと、現地で事故当時の作業員や元原発所長、一般市民等を2012年に取材したドキュメンタリー。なかでもチェルノブイリの北東50キロに建設された代替都市、スラブチチに暮らす人たちの証言が興味深い。人口2万5千人の住民の半数近くがチェルノブイリ原発で働いているが、手厚い福祉政策のためか他の地域から新たに移住してきた若い世代も多く、活気のある都市に成長、その姿を福島への一つの回答として示す。映画の中で、チェルノブイリ事故経験者はみな口々に、福島に向けて励ましや助言を語っている。10年後の今の日本を彼らはどう見ているだろうか?

・視聴方法:amazon prime (レンタル330円他) 。DVD 5,280円
https://www.amazon.co.jp/DearFukushima-%E3%83%81%E3%82%A7%E3%83%AB%E3%83...

●『チェルノブイリ・28年目の子どもたち』2014年公開 制作:白石草(OurPlanet-TV)


第33回月1原発映画祭で上映し、白石草さんにもゲストに来ていただいた映画です。
取材地は、チェルノブイリから140㎞西にあるウクライナのコロステン市。7年前の映像ですが今回見直して改めて感じたのは、日本政府が福島原発事故の被害を小さく見せようとするあまり、ひとりひとりの(特に子どもたちの)被ばく状況などにまったく向き合わず、対策をたてていないということでした。映画に登場する「チェルノブイリ法」「保養」「個人の被ばく線量管理とデータベース化」などは、日本では今だに制度がなく、「健康検査」は縮小されようとしています。なぜ日本は現実を認めて対策を取ることができないのでしょうか。

・Youtubeにて無料公開
http://www.ourplanet-tv.org/?q=node%2F1765
・映像報告に盛り込めなかった重要ポイントのまとめ
http://www.ourplanet-tv.org/files/QAsheet.pdf
・月1原発映画祭での白石さんのトーク(2015年1月)はこちらから
http://www.jtgt.info/?q=node/699

●『小さき声のカノン―選択する人々』 監督:鎌仲ひとみ/2015年/119分/日本


「放射線量が高くなってもそのまま住み続けて健康に影響はない」と日本政府は公式に言い続けている。チェルノブイリの原発事故でも、有名な教授の「ここで生活して大丈夫。何も心配しないように」との発言が社会全体に拡散され人々は安心した。しかし実際には10年以上経って甲状腺がんが急増し、子どもたちはその他にもさまざまな疾患に苦しんでいる。この映画は、子どもたちを原発事故による被曝から守ろうとする母親たちを描く。完成当時も見たけれど、今回再鑑賞して、人間の記憶はどんどん薄れていくと実感。原発事故が何を引き起こすか肝に銘じた。月1原発映画祭では2016年7月、8月と、この映画と並行して作られた鎌仲監督のミニドキュメンタリー「カノンだより」で、「被曝と保養」をテーマに現地の当事者たちからの声を聞いた。(8月にはゲストの鎌仲監督からお話をうかがいました)

・視聴方法:Vimeoで800円で視聴。DVD 4,950円。
https://vimeo.com/ondemand/canon
・チェルノブイリツアーなども含め現地からの声をレポートした『カノンだより』のDVDも上映権付きで購入可能(Vol.1〜Vol.3は2,200円、Vol.4は3,300円)
http://shop.kamanaka.com/?pid=64990121

●『サマショール 遺言 第六章』2020年3月公開 監督:豊田直巳・野田雅也


福島原発事故直後から飯舘村の酪農家、長谷川健一さん、長谷川花子さん夫妻を追う。捨てられる牛乳、殺処分される牛たち、そして、隣町・相馬市の酪農仲間、菅野重清の自殺。2014年に『遺言 原発さえなければ』として一章から五章まで3時間45分が一挙公開されたが、その後の第六章(113分)で長谷川健一さんはチェルノブイリに旅をする。30年たっても村は廃墟のままで、「自主帰還者」という意味の「サマショール」たちと出会う。村に帰るべきか否か、村は復興するのか、再び酪農はできるのか。苦悩し続ける長谷川さんだったが、チェルノブイリへの旅で未来の飯館村を見、サマショールたちに自分を重ね決意する。人が住めるようになるのは100年か、200年か、もっと先かもしれない。その日のために、長谷川さんは、飯館村で誰にも食べさせるあてのない蕎麦を育てる。月1原発映画祭では2017年1月8日、2月5日、3月5日と3分割して上映。第六章は2020年3月に1か月弱上映されて延期に。今年3月に全国上映され、5月からは各地で自主上映が始まる。

・月1原発映画祭での上映(2017年)
1月8日: http://www.jtgt.info/?q=node/1536 http://www.jtgt.info/?q=node/1630
2月5日: http://www.jtgt.info/?q=node/1598 http://www.jtgt.info/?q=node/1968
3月5日: http://www.jtgt.info/?q=node/1648
・『サマショール 遺言 第六章』 https://www.yuigon-fukushima.com/blank-1

*以上、チェルノブイリ関連の映画を紹介させていただきました。月1原発映画祭では上映のあとに、映画の感想などを語り合えるカフェを開いてきました。コロナウィルスの影響が無くなり上映会を開催できるようになったら、また皆さんと映画を見て語り合いたいと思っています。今回ご紹介した映画への感想などがあれば、eigasai2021★jtgt.infoまでどうぞお寄せください。←★を@に置きかえてください。
(文責:小林晶子)

■ 超ショートコラム「自分の言葉で答えよう」

「原発ないと困るでしょ」って言われたら?→
月1原発映画祭ニュースレター第6号で双葉町から避難され、今は埼玉県で農業をしていらっしゃる鵜沼久恵さんのことを知った。「自然災害と原発事故は違う」と話される鵠沼さん、その笑顔に諦念を感じた。
3月6日のEテレ「原発事故“最悪のシナリオ”〜そのとき誰が命を懸けるのか〜」を見て、事故当時、国の存立に響きかねない最悪の事態が起こり得る可能性があったと知った。東京に住む私達が避難せずに済んだのは偶然だ、と。原発に頼らないエネルギー施策の実現に国が全力を注ぎ、それを私達が不便があってもサポートする、それが国難を遠ざけるのではないか。(東京都・t-collage)

*次回からこのコーナーは「オンライン・カフェ 自分の言葉で伝えよう」として、原発に関する投稿を募集します。「原発ないと困るでしょ」「原発ゼロの主張は無責任」と言われたらあなたはどう答えますか? あるいは、下記の一行ニュースなどに対する意見、映画や本の紹介などを、200字程度でお願いします。名前/ペンネーム、住んでいる地名などは投稿された方の任意とします。月1原発映画祭の「交流カフェ」のつもりでお気軽に。
投稿の原稿はメールでeigasai2021★jtgt.info 宛にお送りください。←★を@に置きかえてください。

■一行ニュース

・NHK 柏崎刈羽原発 長期間テロ対策に不備 「最も深刻レベル」規制委 (2021/3/16)
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20210316/k10012918371000.html

・東電に是正措置命令へ 規制委、柏崎刈羽テロ対策不備で(2021/3/24)
https://www.asahi.com/articles/ASP3S4T21P3RULBJ016.html

・東海第二原発 再稼働認めず 水戸地裁判決(2021/3/18)
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20210318/k10012921701000.html

・国に賠償命令、8件目 いわき市の原発避難訴訟―福島地裁支部(2021/3/26)
https://www.jiji.com/jc/article?k=2021032601132&g=soc

・事故を起こしたのは東電なのに…「顔」も主体性も見えぬまま 原発処理水の海洋放出方針決定へ(2021/4/8)
https://www.tokyo-np.co.jp/article/96486

■ インフォメーション

・ポレポレ東中野にて 特集上映《35年目のチェルノブイリ》 4月17日~30日
https://pole2.co.jp/coming/f9a7d487-b497-4852-bd5a-383bb39afbb6
本橋成一監督の新作『人間が汚した土地だろう、どこへ行けというのか』など多数上映

・映画『東京原発』 4月23日(金)23:59までGYAO!にて無料配信されています。
https://gyao.yahoo.co.jp/episode/%E6%9D%B1%E4%BA%AC%E5%8E%9F%E7%99%BA%E3...

■ 次回のニュースレター

次回のトピックは「小型家庭内太陽光発電のススメ」の予定です。
*ニュースレターのバックナンバーはこちらから
http://www.jtgt.info/?q=taxonomy/term/21

■ 月1原発映画の会

問い合わせ先  eigasai2021★jtgt.info ←★を@に置きかえてください。
http://www.jtgt.info/ (地域から未来をつくる・ひがし広場内)

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