2016年11月26日(土) シンポジウム 原発安全神話と科学技術の問い直し〜原発避難の現実から考える〜

■シンポジウム
 原発安全神話と科学技術の問い直し
  〜原発避難の現実から考える〜

http://www.tku.ac.jp/news/018364.html (チラシはHPよりDL可)
県外避難者の「命綱」であった住宅補助の今年度末での打ち切りや福島県
県民健康調査の結果の扱い方から,避難そのものを「ない」ものにしてしまおう
という圧力を感じます。シンポジウムでは,初めて「避難者の権利」を保障した
チェルノブイリの実例に学びながら,「科学」のあり方に迫ります。

日 程: 2016年11月26日(土)14:30〜17:30
場 所: 東京経済大学 国分寺キャンパス 大倉喜八郎進一層館
     http://www.tku.ac.jp/access/kokubunji/
備 考: 参加無料、参加申込不要
主 催: 東京経済大学学術研究センター、環境思想・教育研究会

●基調講演
  「チェルノブイリ法と移住権(保証された自主的退去)」
     尾松 亮 氏(ロシア研究者,関西学院大額災害復興制度研究所研究
    員。著書に『原発事故 国家はどう責任を負ったか』,『3・11とチェル
    ノブイリ法』ほか。岩波書店の雑誌『世界』2016年5月号〜12月号に連
    載中)

●特別発言
   「福島第一原発事故・母子避難の苦悩」 
     吉田 千亜 氏(ジャーナリスト、近著に『ルポ母子避難——
           消されゆく原発事故被害者』)

●パネラー報告
  「避難者の原発事故・汚染認識と避難の決断」
     早尾 貴紀 氏(東京経済大学准教授)
  「被ばくの健康リスクをめぐるディスコミュニケーションと住民運動」
     山川 幸生 氏(東京災害支援ネット事務局長)
  「なぜ『変わらない』ようにみえるのか〜原子力関連施設立地地域の調査
   から」
     澤  佳成 氏(東京農工大学講師)
 司会・コーディネーター: 関 陽子(長崎大学),尾崎寛直(東京経済大学)

●プログラム
  14:30  開催挨拶・趣旨説明
  14:40〜15:30 基調講演
  15:45〜16:00 特別発言
  16:00〜17:00 パネラーからの報告
  17:00〜17:40 総合ディスカッション
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(報告の概要紹介)

●基調講演(14:40〜15:30)
「チェルノブイリ原発事故と『避難者の権利』」 尾松 亮 氏

 チェルノブイリ原発事故(1986年)の5年後、91年に成立した「チェルノブイ
リ被災者保護法」(チェルノブイリ法)では、一定の汚染度を超える地域の住民
に「移住の権利」と同時に「住み続けるリスクに対する補償」を認めた。
 これは短期的な原状回復が不可能であることの認識に立ち、「甲状腺がん」な
どの目に見える実害がなくとも、「居住地域が法定基準を超えて汚染された」リ
スクに対する補償を認めるものだ。
 近年この法律の執行率が下がったことや、補償金額が縮小されたことばかり報
じられる。しかし、この法律が、地域住民の「避難」「放射線防護」についての
選択を社会的に承認した効果は大きい。このような社会的関係を可能にした、チェ
ルノブイリ法の思想に注目する。

●特別発言(15:45〜16:00)
「福島第一原発事故・母子避難の苦悩」 吉田 千亜 氏(ジャーナリスト)

 原発事故が発生し、今なお、福島県だけで、86863人(9月12日時点)の方が避
難生活を送っている。避難指示のなかった区域、いわゆる自主避難者の人数は未
だに正確に把握されていない。把握されていないどころか、今後は、2017年3月
に迫る借上住宅打ち切りを機に、どんどん登録から抹消されていくことになる。
避難指示のなかった地域の、数えられなかった被害、消されてゆく被害について、
改めて考える時期に来ている。「母子避難」「自主避難」そして、福島県中通り
を中心にした、現地の取材をもとに考える。

●パネルディスカッション(16:00〜17:40)
 パネラー発言
(1)早尾 貴紀 氏(東京経済大学准教授)
「避難者の原発事故・汚染認識と避難の決断」
 原子力発電所の深刻な放射能汚染をともなう事故の際に、避難さらには移住と
いう方法で被曝リスクを避けようと行動した一般市民は、原子炉の構造や、放射
性物質の特徴、被曝のメカニズムなどについて、あらかじめ知識を持っている者
は極めて限られていた。また事故後にある程度学習が進んだとはいえ、情報開示
は不十分で、さらに専門家のあいだでさえ、事故や汚染の程度、健康への影響に
ついて一致した見解がない状況であった。
 そうしたなかで、被災地の市民らの避難や移住の決断はどのようになされ、ま
た実際の避難や移住はどのようなルートや行き先だったのか。原発に関する理論
や技術の「素人」たる市民の判断と行動を整理する。

(2)山川 幸生 氏(東京災害支援ネット事務局長)
「被ばくの健康リスクをめぐるディスコミュニケーションと住民運動」
 福島第1原発事故では、東北・関東を中心とする広範な地域が放射性物質で汚
染された。放射線による被ばくの影響を懸念する住民は多い。しかし、福島県内
で事故当時18歳以下だった者を対象とする甲状腺検査が行われているほかは、
政府は同事故に関連する医療健康対策には消極的である。
 その甲状腺検査の結果、これまでに、がんまたはがんの疑いと診断されたのは
174人(2016年9月14日の県民健康調査検討委員会)。これに対し、環
境省の専門家会議は、同事故による被ばくの生物学的影響を認めず、今後の疾病
リスクの可能性も小さいとした。低線量被ばくは心配ないという政府側のPR
(リスコミ)に覆われるなか、検査対象地域の拡大など医療健康対策の充実を求
める住民運動にも注目したい。

(3)澤  佳成 氏(東京農工大学講師)
「なぜ『変わらない』ようにみえるのか?——原子力関連施設立地地域の調査からみ
えてきたこと」
 3・11が起き、避難を巡って被災者が苦悩する姿を目の当たりにしているは
ずなのに、なぜ、原子力関連施設立地地域では、自治体が再稼働の要請を行った
りするのだろうか。よくいわれるように、原発マネーがなければ自治体行政が成
り立たなくなっているからだという理由は、その通りだと思われる。
 しかし、だからといって、「推進」する人びとを「結局はいのちよりカネが大
事なのか」と感情的に批難したところで、事態はけっして改善しない。では、ど
うすればよいのだろうか。
 本報告では、青森県下北地域での4年半の調査をもとに、原子力政策に「賛成」
する人びとの中には、積極的に「推進」する人びとだけでなく、なかば「容認」
しているだけの人びともいるのではないか、という仮説を提起する。また、「容
認」する人びとと「反対」する人びととの間に共通する思いもあるのではないか
と指摘したうえで、私たちに出来ることはあるのか、考えてみたい。

○シンポジウムに関するお問い合わせ
 東京都国分寺市南町1-7-34東京経済大学尾崎研究室気付
  環境思想・教育研究会事務局
  eco-forum★tku.ac.jp ←★を@に置きかえてください。
  tel. 042-328-7711(代表),fax.042-328-7745

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